

市民生活を支えている物流が多くの方々によってイメージされ、島国に暮らすというライフスタイルを意識してもらえることが、海洋国日本としての展望を開き、日本人船員の誇りある職場の確立にも繋がっていくと考えています。
同じ島国に暮らす仲間として、内航物流に生じている深刻な問題を考えていただき、内航船員にも親近感を持っていただけることを願います。
内航船員の年齢構成は、40歳以上が全体の70.4%を占め、とくに50歳を超える船員は52.7%に及びます。 20代、30代の船員はそれぞれ15.1%、13.2%と極端に少なく、島国の物流を支える若年船員の不足が問題となっています。
1974年には71,269人いた内航船員数(貨物船と旅客船をあわせた数)は、2018年には28,142人にまで減少。 近年では高齢船員のリタイヤによって、若年船員の比率が膨らんで見えてきています。
船員を養成する学校は全国にあり、船員養成機関の努力によって新人船員も増えてきています。
船員を志して進学し、勉学に励み、ユメを叶えた新人船員たちを業界がしっかりと抱え、個々人がより成長を続けられる環境を構築していくこと。若年船員の業界定着率を高めていくことも急務となっています。
船員不足が原因で廃業する会社も出てきています。
499型の典型的な貨物船では、関連法ぎりぎりの少数定員で運航されているケースが多く、若年船員を教育する余裕もありません。 年金受給者を「もぐり」で配乗する低コスト運航が横行していたなごりもあり、若い船員を受け入れ教育していくムードも体力も乏しい状態があります。また、高齢船員がいなければ日本の物流を維持できない「現実」もあります。
早急に即戦力となる若年船員を育成する必要に迫られている中、一人前の船員になるためには現場仕事の「実践」が重要であり、余裕のある人員数のもとで技術や経験の継承がなされていく必要があります。
近年の長引く景気低迷によって内航船が激減していくと、水面下で深刻な船員不足がより進行し、本来景気の回復に必要であるだけの船員数がとっくに足りなくなっている事態も起こり得ます。少数定員で動かしている内航船の現状は少数精鋭です。そんな船員を一朝一夕に輩出することはできません。景気の動向に惑わされることなく、必要な船員を維持しておく必要があります。
船員不足の助けになるだろうと自動化船技術の研究が進められています。
しかし現状、すでに最少の定員数で運航されているのが内航船です。この最少の定員数というのは洋上での緊急事態に自力で解決できる最少の人数でもあります。また平時においては手数が必要な機械のメンテナンス作業はできなくなり、接舷中に外注依頼することになり、機関士の技術継承を断つことにもなります。
緊急時には助からない状態を知りつつ深夜の暗い大洋を航海する命がけの航海士。簡単なメンテナンスしかできない機関士。そこに職業としての船員の魅力はあるのでしょうか。自動化船の研究が不要とは思いません。完全自動化船がうまくいかない場合にも、そこで生まれた技術は必ず船員の助けになるはずだからです。しかし、これらの研究が今、船員を志す若者に対し職業の魅力を喪失させていることへの配慮は必要です。現在、現実に船員の不足は非常に深刻な状況です。
若年船員が乗り続けられない(離職率が高い)原因は、物流産業の重層的な産業構造に起因するものから、高齢先輩からのいじめまで多数ありますが、インターネットを容易に利用できない現状は非常に大きな問題であると考えています。
これから内航船に乗り込んでくる新卒船員は「平成生まれ」で、ネット環境を生活インフラとして過ごしてきています。船内でもプライバシーが確保された自由なネット環境を用意する必要があります。
船内生活におけるネット環境の整備は、船員一人ひとりの社会的な文化生活の面からも非常に重要な問題となっていきます。 これからの「情報格差」は「機会獲得」の格差と同じ性質があり、そのまま「貧富の格差」にも直結していく問題です。
家族と離れている船員の生活では子どもの進学や就職の際にも、充分に応援してあげることができません。 一般家庭同様に世間一般的な情報くらいには調べものをしてサポートできる存在でありたいと考えることは一人の社会人として当然の思いです。
近年では、国交省海事局や海上保安庁が船員に向けたサービスでインターネットを活用することもあります。内航船内でのインターネット環境が発展していくことで、船員の業務が助けられたり、リアルタイムの情報を使った物流の効率化が進んでいくことも考えられます。
携帯電話の無線エリアは以前よりもだいぶ拡がっていますが、海上ではまだまだ届きにく海域があります。携帯電話基地局を設置する際に、海上で生活する船員や船員家族のことも意識していただきたいと思います。
地デジ化以降、海上でのテレビが映りにくくなっています。違法な改造をして衛星放送を視聴していた船員が摘発される等していますが、テレビが映らなくなったことも問題です。ゆっくりテレビを観る時間もない船が多いですが、それでも映りぱなしの画面に天気予報や天気図、緊急速報などが入れば誰かが目にして報告したりしています。
内航船員の気質が「労働契約の概念」とは異質のものであったがために、事態の悪化に拍車をかけてきたことも否定できません。 とはいえ、船員の長く多忙な海上生活では、現状の問題点を労使間によって労務委員会で協議しようにも海上からの手段もヒマも無いのが現実だと思います。 陸上からの適切な配慮と監理が無ければ、船員の置かれている状態や体制に関わらず、船員は過大な職責から否応なく船を動かし続けることになってしまいます。
(組合と協約を結んでいない会社に見られる問題点)
・給料明細を出さない会社(年末の源泉徴収書は出す)
・給料明細が大まかで保険料や所得税の記載がない会社(ざっくり「家族送金額」の欄に合計が記されているだけの明細書)
・就業規則や労働契約書記載の賃金が実際と異なる会社
・労働契約書にサインさせて本人には渡さない会社
・ほとんどの会社で時間外手当、家族手当がない。タンカー手当以外の手当がなく、航海日当すらない会社もある
・標準月額報酬を実際の給料よりも低くする
(組合と協約を結んでいる会社に見られる問題点)
・1社で2協約の会社が増加(内労協・一洋会の会社が全内航の会社を作り、新入社員は全内航会社で採用するため、内労協協約の適用社員はいずれ消滅する会社)
・船団との中央協約の例外として、時間外手当固定の「個別協約」を結ぶ会社
・売船や定員減の際に定員割れとなるが組合は無関知(組合の存在の希薄化)
内航船の大半を占める小型内航船(499以下、749でも)多くが自炊となっています。
船員が各自で自炊する船もあれば、新人船員がまとめて調理している船もあります。
(新人船員は船の仕事を教わっている立場なので、調理することで船内で打ち解けることができると考えていることもあります)
問題:調理専門の船員も乗り込んでいる大型内航船に比べると、栄養のバランスなどが考えられていない食生活。結果、内航船員の生活習慣病の疾病率は非常に高い。(漁船よりも高い)
→ どの船にも調理専門の船員が乗り込んでいることが、船員の健康を考えると望ましい。
私たちは内航海運が市民社会からの応援の中で、健全な産業として発展していくことを希望しています。
しかし、内航海運産業自体の認知度が低ければ、子ども達から「内航船員になりたい!」と言ってもらうことは望めません。
人手不足を肌身で感じている現場の船員や船社からも少しずつPRが始まっています。
陸の一般の方たちがネットの中で提案し、実際に記念日として承認に漕ぎ着けた「内航船の日(=7月15日)」に感謝し、内航船や内航船員がより社会的に身近に感じられるようなPRを進めていきたいと思います。
そして、内航海運業界全体としても、自覚をもって市民社会と寄りそった内航海運のPRを進めてもらえるよう協力していきたいと考えています。