シンガーソングライターのRioが 「終焉幕 〜エンドロール〜」 という曲を歌う。
 彼を知ったのは2年以上も前のことになる。 冬空の下、 東京・錦糸町駅の路上に、 彼の大人びた歌声が響いていた。
 当時、 足を止めたのは、 その歌詞の中に 「埠頭」 や 「港」 の独特な雰囲気を感じたからで、 どこか寂しい港湾地域を、 一つの 「情景」 としてとらえることができるのは船員だけのはずだと思っていたせいもある。
 聞けば、 彼は大阪・此花区の出身で、 そのような景色は子供のころから体に染み付いていると言う。 また、 一人で上京してきた彼の孤独さやたくましさに、 船員の心情と重なる部分を感じたのを覚えている。
 彼とは日本人船員の話や海運産業に起こっている実情などを話せる仲になり、 曲作りで 「船員なら、 その時どんな気持ちになるんだろうか」 という相談を電話で受けることもあった。
 世間にあふれる流行歌に 「船員の唄」 がない。 「彼女と一緒にいたい」 「彼女のそばにいてあげたい」、 そんな歌ばかりが海上の船員の耳にも届いている。
 物流を通じて市民生活を守る船員、 大自然の中に励む男たちの誇りを、 ちゃんと確信できるような音楽がほしい。 上っ面の 「海のロマン」 なんかではなく本当の船員の誇りは 「今」、 もっと現実的なものなのだ。

 その後、 彼はプロとして本格的な活動を始め、 若い世代の人たちには有望歌手の登竜門となっているフジロックフェスティバルや全国各地のラジオ番組にも出演するようになっていた。
 そんな彼から久しぶりの連絡があった。 今度、 また新しくCDアルバムを出すのでコンセプトを一緒に考えたいと言うのだ。
 新しい楽曲を聴いて驚いた。 彼は 「船員の想い」 を自分なりに的確に吸収、 消化していた。 かつてのように埠頭に関連する言葉を連ねなくても、 その思いを伝えることはできる。 船員の実情や業界内の問題も、 たった一歩、 一般社会の感性に共感されることになれば、 その進化は想像以上のスピードで前向きな方向性を模索し始めることを感じる。



  すぐに内航海運新聞にも取り上げられることとなった。
  ここ数年、 日本が海洋国家であろうとする理念を構築する機運が高まっている。 その中で、 小型内航船社においては船員法の改正による定員増も相まって、 さらに厳しい試練に立たされている現実もある。
  これを乗り越えなければならない理由は、 海洋基本法をはじめ、 その問題意識が海事産業内にとどまらず日本国の経済社会全体の課題にまで、 ようやく議論が進み始めたからであり、 市民生活に及ぼしかねない深刻な危機を考えれば、 当然、 広く国民に対しても情報が公開され、 その目的意識が共有されるべき性質のものといえる。
  そして、 その目的実現に向かって、 誰よりも期待され、 励まされるべき環境に立たされているのが現場の日本人船員である。 精神的にも肉体的にも、 この特異な環境を乗り越えようとしている彼らとの 「共通認識」 は、 互いにとって絶対に重要となる。
  近年の総合的な海事政策の風は、 船員と市民との認識の壁を取り払い、 共に国民として海洋立国の夢を語り合えるようになる機運ともいえる。 そんな動きに敏感に期待したい。

 内航海運新聞 (平成19年11月12日号) の取材でRioはこう語っている。 (抜粋)
  「…、 全国のライブハウスを回っているうちに船員さんに声をかけられることもあります。
あの一見何もないだだっ広い港湾地域の景色を心にとどめている仲間だなぁと、 何だか親しみを感じたりしますね。
  実は、 僕のおやじも昔船に乗っていたらしいんですが、 最近までそれを意識することはなかったんです。 理解できなかったんだと思います。
  どういう人間がカッコイイのか、 どんな人が社会を支えているのか、 無言の中で見落とされてきた男たちが見えてきたんです。 ちょうど映画のエンドロールに流れるキャストみたいに、 誰にも意識されない大事な人たちがいる。 今回のCDに収録されている 「エンドロール」 という曲は、 そんな思いで 「船乗り」 たちを書きました。
  現在の船乗りを、 単にロマンだとか潮っぽさだとかいう表現でうたいたくなかった。 みんなの生活につながっている海や埠頭から、 ちゃんと社会を眺めていたいと思うんです」


 終焉幕 〜エンドロール〜
                 作詞・作曲:Rio
船乗りのパパが嫌いで 遙か遠い旅に出た
先々じゃ色々あって無言のパパの理由を知る
だからさ 伝えたいコト 山ほどあるけど
ボクも胸の中に じっと仕舞っとくよ
誰もいない劇場で流れるエンドロール
儚いまま 映らないまま 巡り続ける

銀幕を昇り出した 名も知らぬキャスト達
海原を泳ぎながら いつか辿り着くんだろう
いつでも そっと遠くで 見つめているよ
キミに気づかれないように 座ってるさ
誰もいない劇場で流れるエンドロール
儚いまま 映らないまま 巡り続ける

船乗りのパパの想いは 長い長い月日を超え
いまじゃボクも似たような 丘の上の船乗りになった

想いを繋ぐ 明日へのエンドロール

「 TAXI 」
 1, 街路の灯り
 2, シトロエンに乗って
 3, ALONE ROAD
 4, マリオネット
 5, Rio e' un Maestro
 6, 凛 Ring リン
 7, TAXI
 8, 終焉幕

TAXI/Rio \2,500- (税込)
商品コード:XQEA-1001
絶賛!大好評です!
(全国の CD ショップで購入可能)
公式HP:http://www.rio-web.net/


「全日本内航船員の会」は、RioのCDアルバム「TAXI」の制作に協力しています。